「ゲームを作るなら Unity と Unreal Engine、どっちがいいの?」——これは私もずっと気になっていた疑問です。記事や動画では「Unrealは綺麗」「Unityは手軽」とよく言われますが、言葉だけだと正直ピンときません。
そこで今回は、全く同じ3Dゲームを両方のエンジンで実際に作り、見た目・物理・動作の重さを並べて比べてみました。なるべく公平になるよう、同じ構成・同じ物理のシーンを両方で組んでいます。
・Unity と Unreal、同じゲームの見た目の違い(ライティング・影・反射)
・物理挙動の違い(箱を崩す)
・FPS・容量・学習コストの違いを表で比較
・初心者にはどっちがおすすめかの結論
2大ゲームエンジンを、同じ題材で比べる
ゲームエンジンとは、ゲームを作るための「土台ソフト」です。3D空間・物理・光・音などの仕組みが最初から入っていて、その上に自分のゲームを組み立てます。世界的に二強なのが、Unity(多くのスマホゲーム・インディーゲームで採用)と Unreal Engine(フォートナイトの開発元Epic Games製。フォトリアルな大作で有名)です。
両者は思想が違います。ざっくり言うと——Unityは軽量で手軽、Unrealは高品質で本格的。それを実際の画面で確かめます。
今回の環境
再現できるよう、使ったバージョンと設定を細かく載せます。両エンジンとも同じMac1台で、できるだけ条件を揃えました。
| 項目 | Unity | Unreal Engine |
|---|---|---|
| マシン | MacBook Pro(Apple Silicon M4)/同一マシン | |
| バージョン | 6000.4.5f1(Unity 6) | 5.7.4 |
| 言語 / 記述 | C#(エディタ拡張で自動配置) | Blueprint+Python(同じく自動配置) |
| 描画 | ビルトインRP(標準) | Lumen+Nanite(標準・最高品質プリセット) |
| ライティング | Directional+補助光+Reflection Probe | Directional+SkyAtmosphere+SkyLight(テンプレ標準) |
| 物理 | Rigidbody(箱mass1・ボールmass6) | Simulate Physics(同等mass) |
※ 比較を「同じゲーム」に寄せるため、シーンの箱は 4×4の16個、これに重い球を上から落として崩す、という条件で統一しています。
比較する題材:3D物理ミニゲーム
題材選びは大事です。スコアを数えるだけのアプリでは、エンジンの差はほとんど出ません。そこで「光・影・反射のある3D空間で、積み上げた箱を物理で崩す」ミニゲームにしました。これなら——
- 描画:床や箱への光の当たり方・影・空の表現で差が出る
- 物理:崩れ方・転がり方でエンジンの物理挙動が見える
- 負荷:リアルタイムに物理+描画が走るのでFPS(なめらかさ)に差が出る
と、3つの違いが一度に見える“おいしい”題材になります。
Unityで作る
Unityはとにかく立ち上がりが速いです。プロジェクトを作ってすぐ、床(Plane)と箱(Cube+Rigidbody)を並べ、カメラの前からボールを発射するC#スクリプトを書くだけ。エディタ拡張で16個の箱を自動配置し、数十分でプレイできる状態になりました。
- 箱:
CubeにRigidbody(質量1)を付けるだけで物理が効く - ボール:スペースキーで
Sphereを生成し、linearVelocityで前方へ発射(速度26) - 描画:標準のビルトインRP。床に
Reflection Probeを置いて軽く映り込みを追加
下が完成したUnity版です。画面左上に出しているのが FPS(1秒あたりの描画回数。多いほどなめらか)。約100FPSと非常に軽快でした。
Unreal Engineで作る
Unrealは、起動した瞬間から空気感が違います。標準の Lumen(リアルタイムの間接光)と Nanite(高精細ジオメトリ)が効いていて、何もしなくても床に柔らかい陰影と空の照り返しが乗ります。箱を並べただけなのに、それっぽい“画”になるのは正直驚きました。
一方で、手軽さではUnityに一歩譲ります。今回もMac特有の落とし穴がありました。
シェーダーのコンパイルで
missing Metal Toolchain エラーが発生。ターミナルで xcodebuild -downloadComponent MetalToolchain を実行して追加部品(約700MB)を入れたら解決しました。Unrealは最初のセットアップでつまずきやすいのが正直なところです。
- 箱:基本形状の
Cubeを置き、Simulate Physics(物理シミュレート)をONにするだけで落下・衝突する - ボール:重い
Sphereを壁の上から落として崩す - 描画:Lumen+Nanite+SkyAtmosphere が標準で有効。最高品質プリセットのまま
完成したUnreal版がこちら。砂漠の地平や空の表現、床のなめらかな陰影に注目です。ただし左上のFPSに注目——約12FPS。Unityの約100FPSと比べて、同じMacでもかなり重くなりました(理由は後述)。
① 描画品質を比べる
まずは見た目。同じ「箱の壁を置いただけ」のシーンを並べます。左がUnity、右がUnrealです。


Unrealは空・地平・柔らかい間接光が標準で乗り、立体感とリアルさが一枚上。Unityは空がシンプルなグラデーションで、良くも悪くも“素直で軽い”見た目です。もちろんUnityもHDRPや作り込みで写実に寄せられますが、「何もしない初期状態での美しさ」はUnrealの圧勝でした。
【補足】UnityをURP・HDRPにしたら差は出る?
「Unityにも上位の描画方式(URP・HDRP)があるけど、それなら差が縮まるのでは?」と思う方へ。先に用語を一言で——Unityには描画の“エンジン部分”が3種類あり、ビルトインRP(標準・今回これ)/URP(軽量バランス型)/HDRP(高画質・高負荷)から選べます。このゲームで切り替えると、結果はこうなります。
| 観点 | 変わる? | 内容 |
|---|---|---|
| 物理(箱の崩れ方) | ❌ 変わらない | 物理計算はレンダリングと無関係。どの方式でも全く同じ挙動 |
| 見た目(光・影・反射) | ⭕ 変わる | 特にHDRPは差が出る(下記) |
| 重さ(FPS) | ⭕ 変わる | 重さは ビルトイン < URP < HDRP。HDRPが一番重い |
- HDRPにすると、より正確な光の回り込み・きれいな影・映り込み(反射)・ふんわりした空気感などが出せて、Unrealのリッチな見た目にかなり近づきます。ただし今回のような「箱と床だけ」の単純なシーンだと、丁寧に設定して初めて差が見える程度で、劇的にガラッとは変わりません。
- URPはその中間で、ビルトインより少し表現が増える代わりに、軽さを保つバランス型です(スマホ向けの定番)。
- 共通して、リッチにするほど重くなるので、HDRPにすればMacでのFPSは今回の約100から下がり、Unrealの重さに近づきます。
今回のUnityは標準のビルトインRPです。Unityでも上位の「HDRP」を選べば、Unrealのようなリッチな描画に近づけられます(ただし動作は重くなります)。つまり今回の見た目の差は「エンジンの差」であると同時に「設定(描画方式)の差」でもある、という点は押さえておきたいところです。
【補足】Unreal Engineにも同じ仕組みはある?
「Unityにビルトイン・URP・HDRPがあるなら、Unrealにも似た選択肢はあるの?」——あります。ただし考え方がかなり違います。Unityが「別々の描画エンジンを丸ごと選んで差し替える」方式なのに対し、Unrealは「強力な描画エンジンは1つだけ。それを機能のオン/オフと品質設定で軽くも重くも調整する」方式です。入口が違うだけで、軽⇔重を選べる点は同じです。
| Unity | Unrealでの相当物 | 中身 |
|---|---|---|
| URP / HDRP を選ぶ | Deferred / Forward / モバイルの切り替え | 標準のDeferredは高機能・PC向け、Forwardは軽量(VR向け)、モバイル用は別系統の軽い描画 |
| HDRPの高画質機能 | Lumen + Nanite のオン/オフ | UE5の目玉機能。入れるとリッチで重い、切ると軽い |
| Quality設定(低〜最高) | スケーラビリティ(低〜シネマティック) | 段階的に品質と重さを調整 |
今回のUnrealは Deferred + Lumen + Nanite を最高品質 で動かしていました。これはUnityで言えば「HDRPで全部盛り」に近い、一番リッチで重い状態です。Lumenを切ったり品質を下げれば、Unrealもぐっと軽くなります(≒UnityのURP・ビルトイン寄り)。
Unity=軽い方の標準(ビルトイン) vs Unreal=重い方の全部盛り(Lumen最高品質) を並べた構図でした。だからこそ「見た目」と「FPS」の差が大きく出たわけで、どちらのエンジンも設定次第で軽くも重くもできる——ここは公平に押さえておきたいポイントです。
② 物理で箱を崩す
次は物理。ボール(重い球)をぶつけて箱の壁を崩します。どちらも箱がリアルに崩れ、物理エンジンはしっかり機能しました。崩れ方の細かな違いは衝突のさせ方の差で、エンジンの優劣ではありません。


触ってみた体感では、物理の“それっぽさ”はどちらも十分。重さ・摩擦・反発といった設定項目も両エンジンに揃っていて、ここで困ることはなさそうでした。
③ パフォーマンス・容量・学習コスト
最後に、数字と使い勝手で比較します。
| 観点 | Unity | Unreal Engine |
|---|---|---|
| FPS(Mac M4・エディタ計測) | 約100 | 約12(最高品質のまま) ※同じプロジェクトをWindows(RTX3060)に渡すと約80に激変 → ④で詳説 |
| 初期状態の見た目 | シンプル・軽い | リアル・高品質 |
| 動作の軽さ | 非常に軽い | 重い(高品質ゆえ) |
| インストール容量 | 軽め(数GB〜) | 大きい(十数〜数十GB) |
| セットアップの手軽さ | すぐ動く | 部品追加など一手間(Mac) |
| 記述 | C#(学びやすい) | Blueprint(ノード)+C++ |
| 学習コスト | 低め・日本語情報が豊富 | やや高め・大規模向け |
| 得意分野 | スマホ・2D・インディー | フォトリアルな3D大作 |
今回のUnrealの約12FPSは、Lumen+Naniteを最高品質のまま・エディタ上で・Mac(Metal)で動かした“盛りに盛った”状態の数値です。MacはUnrealのハードウェアレイトレに非対応で不利なうえ、エディタ自体の負荷も乗っています。品質設定を下げたり、最適化してビルドすれば、Unrealのフレームレートは大きく改善します。「Unrealは常にUnityの8分の1」という意味では決してありません。あくまで“初期状態の重さの傾向”として見てください。
→ これを確かめるため、同じプロジェクトをWindows(RTX3060)に渡して測り直しました(次章)。
④【実機検証】Windows(RTX3060)で測り直したら別物だった
ここまでの数字は Mac(M4)1台での計測です。とくにUnrealの約12FPSは「Macが不利な条件」での値なので、これだけで「Unrealは重い」と結論づけるのは不公平です。そこで、作った2つのプロジェクトをそのままWindows PC(GeForce RTX 3060)に渡し、同じゲームを別マシンで動かしてもらいました。これが今回いちばんの発見でした。
Windows 11 / CPU: Ryzen 7 7840HS / GPU: NVIDIA GeForce RTX 3060(VRAM 12GB)
Unity 6000.4.5f1 / Unreal Engine 5.7.4(DirectX 12・ハードウェアレイトレ有効のLumen+Nanite)
Mac と Windows でこんなに違った
| エンジン(同条件) | Mac (M4) | Windows (RTX3060) |
|---|---|---|
| Unreal(最高品質・HW Lumen) | 約12 FPS | 約80 FPS |
| Unreal(品質:中) | — | 約95〜100 FPS |
| Unity | 約100 FPS | 60 FPS(※表示上限・後述) |
注目は Unreal。Macで約12FPSだった全く同じ最高品質プロジェクトが、Windows(RTX3060)では約80FPSと、およそ6〜7倍に跳ね上がりました。これは ハードウェアレイトレ対応のGPU(RTX系)でLumenが本気を出すためで、「Unrealが重い」のではなく「Unrealは対応GPUを積んだマシンでこそ真価を発揮する」のだとハッキリ分かりました。品質を「中」に下げれば約100FPSまで伸び、十分実用的です。
Unityの「60」は遅いわけではない(正直な補足)
表のUnityは Windowsで60FPS、Macで約100FPSですが、これは「WindowsのUnityが遅い」という話ではありません。Windowsのエディタ再生は画面のリフレッシュレート(60Hz)に上限が張り付くためで、実際のGPU処理時間を見ると わずか1.0ミリ秒——理論上1000FPS級の余力があります(Macの約100も高リフレッシュ表示の差)。つまり Unityはどちらのマシンでも「GPUに余裕で軽い」のが実態です。フレームレートの数字を比べるときは、こうした表示上限の存在に注意が必要、という良い学びになりました。
・Unrealの“重さ”はマシン依存。HWレイトレ対応GPUなら最高品質でも約80FPSと実用的
・Unityは元々とても軽く、数字の上限は表示リフレッシュによるもの
・「重い/軽い」は使うPC込みで判断するのが正しい
結論:初心者はどっちを選ぶ?
実際に同じゲームを両方で作ってみた、私なりの結論です。
- これから始める初心者 → Unity。とにかく軽くてすぐ動き、C#も学びやすく、日本語の情報が圧倒的に多い。最初の「動いた!」までが速いのは正義です。
- 見た目のリアルさを最優先 → Unreal Engine。何もしなくても綺麗で、フォトリアルな映像・建築ビジュアライズ・大作志向ならこちら。ただしマシンスペックと学習時間は要求されます。
個人的には、「まずUnityで“作りきる”体験を積み、いずれ高品質に挑みたくなったらUnrealへ」という順番が、非エンジニアにはいちばん挫折しにくいと感じました。どちらも無料で始められるので、迷ったら両方触ってみるのがおすすめです。
それでは、今回はここまで。最後までありがとうございました😊