3DCGで「リアルな人間」を1から作るのは、本来ものすごく大変です。ところが Unreal Engine の MetaHuman を使うと、フォトリアルなデジタルヒューマン(CGの人間)を、専門知識ゼロに近い状態から作れてしまいます。今回はその MetaHuman で、実際にリアルな人物を1体作ってみました。しかも MetaHuman は2025年に大きく作り方が変わったばかり。その“今の姿”を、実際の画面つきで見ていきます。

🧑 この記事でわかること
・MetaHumanとは何か+2025年の刷新(ブラウザ版廃止 → Unreal Editorに統合)
無料で使える範囲と、他のソフト/エンジンでも使えるようになったライセンス
・UE内の新Creatorで、プリセット→顔→肌→髪を編集する手順
Lumenで肌のやわらかさや髪の質感がどう出るか(実レンダー)
いちばんの落とし穴=造形はローカルでも、自動リギングとテクスチャ取得はEpicログインが必須、ほか詰まりどころ

制作環境:Windows / RTX 3060(VRAM 12GB)/ Unreal Engine 5.7.4・MetaHuman 5.7。MetaHuman+Lumen(髪・肌)は重いので今回はWindowsで制作しています。

作るもの:UEだけでリアルな“人間”を作る

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完成形がこちら。Unreal Engineの中だけで作った、フォトリアルな女性のデジタルヒューマンです。肌の質感、髪の毛の1本1本、目や眉——どれも「作り込んだ」というより、用意された部品を選んで少し調整しただけで、ここまで来ます。

UEのMetaHuman Creatorで作ったリアルな女性の顔のクローズアップ
UE内のMetaHuman Creatorのプレビュー(スタジオ照明=Lumen)。肌のサブサーフェス(光が肌に少し潜る質感)や毛穴、髪のほつれまで出ている。すべてUnreal Engineの中で完結

MetaHumanとは+2025年の大きな変化

MetaHumanは、Epic Games(Unreal Engineの会社)が提供するフォトリアルなデジタルヒューマンを作る仕組みです。顔・肌・髪・体型・服を、用意されたプリセットやスライダーで組み合わせるだけで、映画やゲームに使えるレベルの人間ができます。

ここで大事なのが、2025年にMetaHumanは作り方が根本的に変わったことです。以前を知っている人ほど、情報が古くなっています。

📌 2025年の刷新(ここが今回の肝)
ブラウザ版のMetaHuman Creatorは廃止。以前はクラウド(ブラウザ)で顔を作っていましたが、Unreal Engine 5.6(2025年6月)から、まるごとUnreal Editorの中に統合されました。今はUEの中だけで作ります。
・最新は MetaHuman 5.7(2025年11月、UE 5.7と同時)。プラグインはmacOS/Linuxにも対応し、Python/Blueprintでの自動化APIも追加されました。

つまり「MetaHumanってブラウザで作るんでしょ?」はもう古い情報。今回はその新しい“UE内Creator”で作っていきます。

出典:MetaHuman公式「MetaHuman 5.6リリース」 / 同「MetaHuman 5.7」 / Epic公式ドキュメント「MetaHuman Creator in Unreal Engine」

無料で使える?ライセンスの話

「こんなにリアルな人間、無料で使えるの?」——ここも2025年に緩和されました。要点だけ整理します。

  • 基本は無料:MetaHumanは年間の売上が100万米ドル(約1.5億円)未満なら無料で使えます。それを超える場合はUnreal Engineの標準規約が適用されます。
  • 他のソフト/エンジンでも使える:以前はほぼUE専用でしたが、UnityやGodotなど他のエンジン・制作ソフトでも使えるようになりました(EULAの改定)。
  • 販売もできる:作った衣装などをMetaHuman形式にして、EpicのマーケットFabで売ることもできます(クリエイター側の取り分が大きい配分)。

個人や小規模で「作って、動かして、公開する」ぶんには実質無料と考えて差し支えありません。

出典:MetaHuman公式ライセンス(年商100万ドル未満は無料・他ソフト/エンジンで使用可) / Creative Bloq「MetaHuman broke free from UE5」(他エンジン利用・Fab販売の解説)。※正確な条件は必ず公式の最新規約を確認してください。

作り方①:UE内の新Creatorで顔・肌・髪を作る

手順は驚くほどシンプルです。UEのコンテンツブラウザで 「MetaHuman キャラクター」アセットを新規作成し、ダブルクリックすると MetaHuman Creator が開きます。まずはプリセット(見本の人物)を選ぶところから。下の左側の一覧がプリセットです。

UE内のMetaHuman Creator。左にAda/Aera/Celesteなどのプリセット一覧
UE内のMetaHuman Creator。左のプリセット(Ada / Aera / Celeste…)から出発点を選び、そこから顔・肌・髪を調整していく。すべてUEの中の操作

は、顔の上に出る丸いハンドルを動かしたり、複数のプリセットを“ブレンド(混ぜる)”したりして整えます。粘土をこねるように、目・鼻・輪郭を少しずつ寄せていくイメージです。

MetaHuman Creatorの顔編集。顔に操作ハンドル、左にブレンドのUI
顔の編集。顔上のハンドルで造形、左のパネルで複数プリセットの“ブレンド”やスカルプト(彫り込み)ができる

は、肌の色みやそばかす、質感(アルベド=色/ノーマル=凹凸)を選べます。今回はそばかすを少し足して、生っぽさを出しました。

MetaHuman Creatorの肌マテリアル編集画面
肌のマテリアル。肌トーン・そばかす・質感テクスチャを選ぶ。ここの作り込みがリアルさに直結する

は「グルーム」という、毛を1本1本のストランドとして扱う仕組みで表現されます。だから毛先が透けたり、束になってほつれたりと、板ポリの髪とは段違いの質感になります。

MetaHumanの髪(グルーム)のクローズアップ。毛先が透けている
髪は「グルーム」=毛を1本ずつのストランドで表現。毛先の透けや束感が自然に出る

作り方②:シーンに置いてLumenで質感を出す

キャラができたら、シーン(レベル)に配置して、Lumen(UEのリアルタイム間接光)でライティングします。すると、肌のやわらかさや髪のツヤが「その場の光」になじんで、一気に生っぽくなります。

面白いのが下の画面。周りに置いた緑のブロックの色が、顔の側面に“回り込んで”映り込んでいます。これはLumenの間接光(GI)が効いている証拠で、現実の「レフ板の色移り」と同じ現象です。リアルさはこういう“光の回り込み”から生まれます。

レベルに配置したMetaHuman。緑ブロックの色が肌に回り込むLumenの色ブリード
レベルに配置してLumenでライティング。緑ブロックの色が肌に回り込む「色ブリード」=間接光(GI)が効いている好例。※クリーンな肌色にしたいときは緑を避けた場所やHDRIで照らす

RTX 3060では、Creator内の編集やプレビューは快適でした。重いのは後述の“書き出し(8Kテクスチャの焼き込み)”の工程で、そこはメモリを食います。

なお今回は「無表情のリアルな見た目」まで。笑顔などの表情や、顔を動かす(MetaHuman Animator)は別途フェイシャルの仕組みが必要なので、今回はスコープ外にしています。

つまずき:ここが初心者の関門(オンライン依存ほか)

「選ぶだけで簡単」と書きましたが、実際はいくつかの関門があります。ここが今回いちばんの学びなので、正直に残します。

  • ① いちばんの落とし穴=オンライン依存:顔や肌の造形はローカル(ネットなし)でできるのですが、自動リギング(動かすための骨入れ)とテクスチャの取得は、Epicアカウントのクラウド認証が必須でした。しかもエディタ内のログイン窓がうまく出ず、ブラウザ(Edge)でのデバイス認証にフォールバック。「サインイン → リグ作成を再実行 → ブラウザで承認」という手順を踏んで、ようやく処理が進みました。“完全オフラインでMetaHumanは完結しない”——ここは知っておくと詰まりません。
  • ② コアデータ(約6GB)の事前導入が必要:Creatorは開くのに、肌テクスチャが出ず「機能が著しく制限されています」と赤字警告。原因は「MetaHuman Creator コアデータ」(約6GB)が未導入でした。Epic Games Launcher → ライブラリ → UEのバージョン → オプション から追加します。
  • ③ メモリを食う:「完全なリグ」を作るには空きメモリ10GiBが必要で、32GB搭載機でも他アプリ次第で不足しました。今回は軽い「ジョイントのみのリグ」で回避(表情は主に骨で動くので実用上は十分)。仕上げの8Kテクスチャ焼き込みもメモリを食う重い工程です。
  • ④ 「組み立て」ボタンが消える:リグを作った後、シーンに出すための「組み立て(アセンブル)」ボタンがUIから消えました。今回はUEのPython APIMetaHumanCharacterEditorSubsystembuild_meta_human / spawn_meta_human_actor)でメッシュを生成してレベルに配置しました。自動化したい人には便利な回避策です。
💡 まとめると:MetaHumanは「選ぶだけでリアル」は本当。ただし①ネット(Epicログイン)が要る場面がある ②コアデータ6GBが要る ③そこそこメモリを食う。この3つを先に知っておくと、初回のつまずきをまるごと避けられます。

再現に必要な設定

  • Unreal Engine:5.7.4(p931p932p939と同系)。MetaHumanは5.7(UE同梱の統合版)
  • 有効化:Epic Games Launcherで「MetaHuman Creator コアデータ」(約6GB)を導入+プロジェクトで MetaHumanCharacter などのプラグインを有効化
  • 作成:コンテンツブラウザで「MetaHuman キャラクター」アセットを作成 → ダブルクリックでCreator → プリセット → 顔・肌・髪を編集
  • オンライン自動リギング・テクスチャ取得はEpicアカウントのログインが必須(造形はローカル可)。デバイス認証を求められたらブラウザで承認
  • 配置:リグ作成後にレベルへ。UIに「組み立て」が出ないときはPython APIbuild_meta_human / spawn_meta_human_actor)で生成・配置
  • マシン:RTX 3060(VRAM 12GB)/ RAM 32GBで編集・プレビューは快適。完全リグや8Kベイクは空きメモリに注意

まとめ

Unreal Engineの新しいMetaHuman Creatorで、リアルなデジタルヒューマンを実際に作れました。ポイントを整理します。

  • MetaHumanは2025年にブラウザ廃止 → UEに統合。今はUEの中だけでプリセット→顔→肌→髪を作る
  • 年商100万ドル未満は無料他エンジン/ソフトでも使え、Fabで販売も可能と、ライセンスも大きく緩和
  • Lumenで肌のサブサーフェスや髪のグルームが自然にリアルに(色ブリードはGIが効いている証拠)
  • 関門は①オンライン依存(自動リギング/テクスチャ取得はEpicログイン必須)②コアデータ6GB ③メモリ。ここを先に知れば初回で詰まらない

「フォトリアルな人間なんて、自分には作れない」と思っていたなら、MetaHumanは一度触ってみる価値があります。プリセットを選んで少し整えるだけで、Lumenの光をまとったリアルな顔が画面に現れる瞬間は、なかなかの驚きです。しかもそれが、UEの中だけで・無料の範囲で始められます。

それでは、今回はここまで。最後までありがとうございました😊