【2026-09-02 加筆】この記事は5.2が出る前の「調べただけ」の予想です
公開後に 実際に5.2 LTSを入れて1項目ずつ答え合わせをしました。結果は7つ当たり・3つ外れ・1つ見落とし。何がどう外れたのかを記事末の「後日談」に足しています。
これまでこのブログでは、Blenderをプロシージャルな街づくりやPLATEAUの都市データの読み込みで何度か触ってきました。ふと「そういえばBlenderって、この先どう進化していくんだろう?」と気になったので、公式のロードマップとリリースノートを調べてみました😊
調べてみると、ちょうど今が面白いタイミングでした。次のLTS(長期サポート版)が数日後に控えていて、さらに2026年いっぱいでジオメトリノード・ヘアー・レンダリングが大きく変わろうとしています。そして避けて通れない3Dモデル生成AIとの関係も整理しました。
・Blenderのバージョンの流れと、もうすぐ来る5.2 LTSの新機能
・2026年に来る注目機能を分野ごとに(ノード物理・新ヘアー・レンダリング・Android)
・それぞれ「どんな人に何が嬉しいか」と、使えそうな時期
・3Dモデル生成AIの種類・必要スペック・Blenderへの持ち込み方・ライセンス注意
・生成AIとBlender本体機能の役割分担
※この記事は調べ物のまとめです(実際に動かす検証はしていません)。内容は2026年7月時点の公式情報にもとづきます。ロードマップは変わることがあるので、最新は必ず公式でご確認ください。出典は各所と記事末尾にまとめています。
まず今どこにいるのか(バージョンの流れ)
「これから」を見る前に、今の立ち位置を整理します。Blenderは年に数回のバージョンアップと、その中でLTS(長期サポート)を挟む形で進んでいます。
ポイントは2つです。ひとつは、今の安定版は5.1だということ(このブログの街づくりの記事で使ったのも5.1系でした)。もうひとつは、数日後に5.2 LTSが正式リリース予定だということ。LTSは「長く安定して使える版」で、ゲーム開発やスタジオのように「途中でツールが壊れると困る」現場が基準に選ぶバージョンです。だから5.2は、多くの人にとって実際に乗り換える一本になります。
もうすぐ来る 5.2 LTS
まず、いちばん近い未来から。5.2 LTSで入る目立つ機能を、うれしさとセットで挙げます。
| 新機能 | 何が嬉しいか |
|---|---|
| 新しいFillツール | メッシュの穴や開いた縁を埋める作業が速くなる。モデリングの地味だけど頻出な手間が減る |
| Thin Wall モード | 薄い壁のある形(コップの縁、板金など)を扱いやすくする |
| Bevelノード(ジオメトリノード) | 角の面取りをノードで手続き的にかけられる。あとから強さを調整し直せる |
| Sample Soundノード | 音声ファイルから周波数を取り出せる。音に合わせて動くモーショングラフィックスが作りやすくなる |
| ノードベース物理シミュレーション | 物理シミュレーションをジオメトリノードで組めるように(後述。ここが一番大きい) |
数日後に正式版が出るので、「次に触るなら5.2」という判断で間違いなさそうです。LTSなので、腰を据えて使う土台にできます。
ジオメトリノードが「物理」まで飲み込む
ここ数年のBlenderで一番元気なのがジオメトリノードです。街を自動生成した記事や自動モデリングの記事で使った、あの「ノードを繋いで形を作る」機能ですね。これが2026年、物理シミュレーションの領域まで広げようとしています。
今のBlenderでは、布・煙・剛体などの物理はそれぞれ専用の仕組みで動いていて、設定項目もバラバラです。これをジオメトリノードという一つの言語で書けるようにする、というのが方向性です。イメージにするとこうです。
関連して、Modal Node Toolsという機能も開発中です。これは、ノードで作った自作ツールをマウスでドラッグしながら対話的に操作できるようにするもので、いずれジオメトリノードのシミュレーションを触りながら調整できるための土台になります。
誰に嬉しいか: シミュレーションを「用意された設定を触るだけ」でなく自分で挙動から組み立てたい人、そして同じ仕組みを部品として使い回したい人です。5.2の「ノードベース物理」はその第一歩で、以降のバージョンで育っていく見込みです。
レンダリング:EEVEEの反射屈折・CyclesのOpenPBR
Blenderには2つのレンダラー(絵にする仕組み)があります。速さのEEVEEと、本物っぽさのCyclesです。この2つの比較はいずれ実機で記事にしたいテーマですが、今回はロードマップだけ。両方に嬉しい進化が来ます。
- EEVEE:反射・屈折の品質アップ。EEVEEは速いぶん、これまでガラスや磨いた金属の映り込みが苦手でした。ここにレイトレース(光を実際に追いかける計算)ベースの反射・屈折が入り、速いのに映り込みも綺麗に近づきます。プレビューや軽い最終出力の質が上がります
- Cycles:OpenPBRノード。OpenPBRはマテリアル(材質)の新しい共通規格です。これに対応すると、他のソフトと材質の見え方を揃えやすくなります。「Blenderで作った金属を別ツールに持っていったら色が変わった」といった食い違いが減る方向です
- Cycles:テクスチャキャッシュ。高解像度テクスチャをたくさん使う重いシーンで、メモリをやりくりして扱えるようにする仕組みです。大規模なシーンを焼く人に効きます
誰に嬉しいか: EEVEEの反射屈折は「速く綺麗に見せたい」全員に。OpenPBRは他ツールと行き来する人に。テクスチャキャッシュは重いシーンを扱うプロに効きます。
髪・アニメーション・パフォーマンス
残りの分野もまとめて。
- 新しいヘアーソルバー:髪の毛の揺れ・絡まりを計算する仕組みが、ジオメトリノードベースで作り直されています。目標は古いパーティクルシステムの置き換え。長年「難しい・扱いづらい」と言われてきた髪まわりが、使いやすくなる見込みです
- アニメーションレイヤー:アニメーションをレイヤー(層)で重ねて管理する機能の開発が再開しました。「歩きのモーションの上に、手を振る動きを別レイヤーで足す」といった非破壊の付け足しができる方向です
- パフォーマンス(Vulkan):描画の土台がVulkanという新しい仕組みに移り、起動やシェーダーの準備が速くなっています(4.5でフルサポート)。派手ではありませんが、毎日触る人ほど効いてくる改善です
- コンポジター:effects stack:映像の後処理をエフェクトを積み重ねる方式に。動画編集(Sequencer)用のエフェクトが、3Dシーンの合成でも使えるようになる方向です
Blenderがスマホ・タブレットへ(Androidポート)
個人的にいちばん驚いたのがこれです。BlenderのAndroidへの移植(ポート)が、ペンタブで有名なWacomの出資で始まっています。iPad向けのプロトタイプに続く動きで、タッチ操作にも対応予定です。
もちろん、いきなりスマホでフル機能というわけではないはずです。ただ、「タブレットでスケッチ的にモデリング」「外出先で確認」といった使い方への入り口が開こうとしている、という事実は面白いところ。デスクトップ前提だった3DCGソフトが持ち歩ける道具に近づくのは、大きな方向転換です。
時期感: これはまだ始まったばかりの初期ポートです。すぐに完成形が来るものではなく、じっくり育っていくタイプの話として見ておくのがよさそうです。
3Dモデル生成AIとBlenderの付き合い方
さて、Blender本体の話から少し離れて。3DCGの世界でいま無視できないのが、テキストや画像から3Dモデルを作る生成AIです。「Blenderの進化」を語るなら、この外側の道具との関係も外せません。まずは種類を整理します(今回は紹介まで。実際に動かす検証は別の機会に)。
| ツール | タイプ | 特徴 |
|---|---|---|
| Hunyuan3D-2 | ローカル | 形状とテクスチャを2段階で生成。PBRテクスチャ付きで品質が高い。独自ライセンス(地域・規模の制限あり) |
| Pixal3D | ローカル | 画像1枚から元写真に忠実な形状+PBR。出力はglb。RTX 30xx以降・VRAM 12GB必須(Mac不可)、導入に約25GB |
| TripoSR | ローカル | 画像から数秒〜数十秒で生成。軽くMacでも動くが、品質は上位2つに劣る。下書き向き |
| Modly | ローカル | 画像1枚からローカル完結で手軽。商用利用は要注意 |
| Tripo | クラウド | ブラウザで手軽。高いPCが要らない代わりに、データはサーバーへ送る |
大きく分けると「ローカル(自分のPCで動かす)」と「クラウド(サーバーにお任せ)」です。ローカルはデータが外に出ない・無料な代わりに、高品質なものはVRAM 12GB級のGPUが要る(=このブログのMacでは厳しく、Windows機の領分)。クラウドはPCを選ばず手軽な代わりに、アップロードが前提です。
出力形式はglb / glTF+PBRテクスチャが主流。BlenderへはアドオンやComfyUI連携で取り込みます。そしてライセンス・商用利用の条件はツールごとにバラバラなので、仕事で使うなら必ず個別に確認が要ります(上の表でも触れたとおり、商用に注意が要るものがあります)。
どこをAIに任せ、どこを自分でやるか
ここが実務の勘どころです。生成AIは「形の下書き」を一瞬で出してくれるのが強みですが、出てきたものはそのままでは使いにくいことが多いです。ポリゴンの流れが汚かったり、スケール(大きさ)がバラバラだったり。
つまり、生成AIが進んでもBlenderの出番が消えるわけではありません。むしろ「たたき台をAI、仕上げをBlender」という役割分担になります。具体的には、AIが出した形をリトポロジー(ポリゴンを引き直す)し、スケールを実寸に合わせ、マテリアルとUVを整えて、Unityやゲームエンジンに持ち込める状態にする——この整える工程が、今回見てきた5.2以降のモデリング機能の強化(Fillツールなど)と地続きなんですね。
おもしろいのは、Blender本体も手作業を速くする方向で進化していること。AIが量を出し、Blenderが質を上げ、その仕上げ作業自体もどんどん楽になっていく。両方が噛み合って前に進んでいるのが今の3DCGだと感じました😊
【後日談】実際に5.2 LTSを入れて答え合わせをした
ここまでは、公式のロードマップとリリースノートを読んで書いた予想です。その後 5.2 LTS が実際に出たので、Blenderの新機能を実際に試してみた(p972)で1項目ずつ突き合わせました。結果は7つ当たり、3つ外れ、1つ見落としです。
| この記事で「来る」と書いたもの | 実際の5.2 | 判定 |
|---|---|---|
| 5.2 LTS がもうすぐ出る | 7月14日リリース・2028年7月までサポート | ✅ |
| ノードベース物理(一番大きいと書いた) | Cloth Dynamics / Hair Dynamics(実験的) | ✅ |
| Bevelノード | Mesh Bevel ノード | ✅ |
| Sample Soundノード | Sample Sound Frequencies ノード | ✅ |
| Thin Wallモード | Principled BSDF に Thin Wall 入力 | ✅ |
| Cyclesのテクスチャキャッシュ | Texture Cache | ✅ |
| EEVEEの反射・屈折の改善 | Screen Space Raytracing Overhaul | ✅ |
| 新しいFillツール(3Dの穴や開いた縁を埋めるものだと書いた) | 来たのは2Dアニメ(Grease Pencil)の塗りつぶし | ❌ 分野を取り違え |
| CyclesのOpenPBRノード | リリースノートに記載なし=入らなかった | ❌ |
| アニメーションレイヤー | 記載なし=入らなかった | ❌ |
| (この記事は触れていない) | オンラインアセットライブラリ | ★見落とし |
外し方に傾向が出ました。Fillツールは項目名だけを見て分野を取り違えていました。OpenPBRとアニメーションレイヤーは、ロードマップに載っていてもその版には入りませんでした。逆にオンラインアセットライブラリは予想にすら出てきません。調べ物では「まだ発表されていないもの」は拾えない、ということです。
実際に動かして測った数字
「一番大きい」と書いたノードベース物理を、平面を1枚置いて Cloth Dynamics を足し、再生ボタンを押すだけで確かめました。板はちゃんと布になります。
| 項目 | 実測 |
|---|---|
| 頂点数(細分化後) | 4,225(64×64) |
| シミュレーション時間 | 120フレームで2.6秒 |
| 垂れ幅の推移(Z方向) | 1フレーム目 0.000 → 10フレーム 0.356 → 40フレーム 4.039 → 120フレーム 4.067 |
| 落ち着くまで | 明確な収束点なし。40フレーム以降も 3.87〜4.09 の間で微振動を続ける |
4千頂点の布が2.6秒で120フレーム回るので、作業の邪魔にはなりません。おもしろかったのはいつまでも止まらないことで、「何フレームで落ち着いたか」を数えようとして数えられませんでした。
調べただけでは分からなかったこと
物理は「モディファイアの新種」ではなく「アセット」として配られていた
手を動かす前は「Cloth Dynamics モディファイアを追加し、実験的機能を設定でONにする」と見込んでいましたが、両方とも外れでした。実体はBlenderに同梱されたジオメトリノードのアセットファイルで、中身を開いて読めるし改造もできます。Preferences の実験的機能は全19項目に物理系が無く、モディファイア全83種にも新しい物理は増えていません。「実験的」であることは、設定ではなく名前に書いてあるだけでした。
もうひとつ、球に布をかぶせる絵は撮れませんでした。衝突させようとするとシミュレーションが返ってこないためです。
| 試した条件 | 結果 |
|---|---|
| 衝突なし(対照) | 5フレームが0.0秒で完走 |
| Collider を繋ぐ | 180秒でタイムアウト(CPU使用は0.8秒だけ) |
| 書き出し処理を外して再生だけ | 120秒でタイムアウト(CPU 0.9秒) |
| Collider → Set Effector と正しく配線 | 150秒でタイムアウト(CPU 0.8秒) |
この表で大事なのは経過時間に対してCPUをほとんど使っていない点です。180秒待ってCPU使用が0.8秒。つまり計算が重くて終わらないのではなく、何かを待ったまま戻ってこない状態でした。エラーもクラッシュも出ません。原因は特定できていません。
Androidポートのその後
この記事で触れたAndroid版も、実際に確かめました(BlenderのAndroid版は使えるのか(p990))。公式の配布サーバに並ぶ63件のビルドに、Androidは1本もありません。Blender本体の判定処理をC++で写し取ってAndroidエミュレータの中で走らせたところ、返ってきたGPU名は「Apple M4」でした。エミュレータはホストのGPUをそのまま見せるので、実機の代役にはなりません。
まとめ
Blenderの「これから」を、公式ロードマップから調べてみました。
- 数日後に 5.2 LTS。5.x系初の長期サポート版で、腰を据えて使う一本になる
- ジオメトリノードが物理まで飲み込む。バラバラだったシミュレーションが一つの土台へ
- レンダリングはEEVEEの反射屈折とCyclesのOpenPBRで、速さと互換性が前進
- ヘアー・アニメーションレイヤー・Vulkanで、扱いづらかった所と日々の快適さが改善
- Androidポートで、デスクトップ前提だった3DCGが持ち歩ける道具へ(まだ初期)
- 3D生成AIは「たたき台」、Blenderは「仕上げ」。役割分担で共存していく
無料で使えるソフトが、これだけ活発に進化し続けているのは改めてすごいことだなと思いました。個人的には、ジオメトリノードのノード物理とEEVEEの反射屈折を実際に触ってみたいところ。機会があれば、レンダラーの比較あたりを実機で試して記事にしてみたいです👍
それでは、今回はここまで。最後までありがとうございました😊
【主な参考】Blender公式「Projects to Look Forward to in 2026」/Blender Developer Documentation リリースノート(5.1・5.2)/Blender.org リリースページ ほか(2026年7月時点で確認)。ロードマップは変更されることがあります。