これまで p921p923 で、PLATEAUの丸の内(東京)をUnityに取り込んできました。Blenderで読み込み、4万5千個のオブジェクトを結合し、ポリゴンを削減し……と、なかなかの手作業でした。今回は同じ街をUnreal Engineで読み込み、「取り込みの手軽さ・最適化・画質・性能」をUnity版と比べてみます。3部作の締めくくり、エンジン対決です。

🏙️ この記事でわかること
PLATEAU SDK for Unrealで街を直接インポートする手順(Blender不要)
Naniteで、Unityでは必須だった手動のポリゴン削減が要らなくなるか
Lumenの画質を、フェアな条件でUnityと並べて比較
・同じWindows(RTX3060)でのFPS・取り込み時間・メモリの実測

3部作のおさらいと、今回やること

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Unity版(p921〜923)では、PLATEAUのデータをBlenderで読み込み → 大量のオブジェクトを結合 → ポリゴン削減 → FBXでUnityへ → マテリアル再設定、という流れでした。正確な街が手に入る反面、手作業の工程が多いのが正直なところ。今回はUnrealの公式プラグイン「PLATEAU SDK for Unreal」を使い、データを直接読み込むルートで同じ街を作り、どれだけ違うかを見ます。

今回の環境(同一Windowsで両エンジン)

比較はフェアさが命。そこで今回は、同じWindows PC(GeForce RTX 3060)の上で、UnrealとUnityの両方を動かして比べます(p924で分かったとおり、Unrealは対応GPUを積んだWindowsでこそ本領を発揮するためです)。

項目内容
マシンWindows 11 / GPU: GeForce RTX 3060(VRAM 12GB)
UnrealUnreal Engine 5.5.4PLATEAU SDK for Unreal v3.2.2(+Lumen)
UnityUnity 6000.4.5f1(ビルトインRP)※p921〜923と同じ街
エリア東京・丸の内(PLATEAUメッシュ 53394611)
⚠️ いきなりの落とし穴:UEのバージョン
最初につまずいたのがUnrealのバージョン。手元にあった最新の UE5.7 は、PLATEAU SDK for Unreal が未対応でした(SDK最新版はUE5.5.4専用)。そのためUE5.5.4を入れ直すところからのスタート(ダウンロード+インストールで約20分)。PLATEAUのSDKは「対応UEバージョン」を必ず先に確認すべし、という教訓です。

① 取り込みの手間:Blender経由 vs SDK直接

まずは取り込み。Unrealは「PLATEAU SDK for Unreal」を入れると、SDKのダウンローダで欲しいエリアのデータを取得して、そのまま読み込めます。Blenderを経由する必要がありません。

PLATEAU SDK for Unrealのインポート画面
PLATEAU SDK for Unreal:エリアを選んで直接インポート
Unrealに取り込んだ丸の内
Unrealに取り込んだ丸の内

具体的には、SDKの「インポート」でサーバー → 東京都 → 千代田区 → 地図で丸の内(メッシュ53394611)を範囲選択 → 「モデルをインポート」するだけ。CityGML(建物・道路・橋梁・地形など)はSDKが自動でダウンロードしてくれます。取り込みは初回のテクスチャ生成込みで15〜20分ほど、しかも手作業はほぼゼロ

Unity版(p921〜923)で必要だった「Blenderで読み込み → 約4万5千オブジェクトを結合 → ポリゴン削減 → FBX書き出し → Unityへ → マテリアル再設定」という数時間がかりの手作業が、丸ごと不要になりました。前シリーズ最大の山場が消える——ここはUnrealの圧勝です。

なお、画像のとおりUnrealに取り込んだ丸の内は、Unityに比べて範囲が狭くなっています。広い範囲を取り込もうとするとダウンロードや展開に時間がかかりすぎるので、今回はこの範囲に絞りました。(このため、このあとの画質・性能の比較も、両者でまったく同じ画角・範囲にはそろえきれていません。その前提で見てください。)

② 手動のポリゴン削減は、もう要らない?

Unityでは4万5千オブジェクトの結合とポリゴン削減が必須でした。Unrealではどうか——結論から言うと、手動の削減・結合はまったく要りませんでした。SDKで取り込んだ建物はフル詳細(LOD2)のままシーンに並び、そのまま編集・表示できます。同じ視点で約283万ポリゴン/ドローコール3893/69FPSと、RTX3060で快適に動きました。

Unrealに取り込んだフル詳細の建物
フル詳細のまま手動削減なしで扱える(Naniteの三角ポリゴン表示で確認)
📝 正直なところ:今回 Nanite は“効いていない”
「Nanite(重いメッシュを自動で賢く扱う仕組み)のおかげ」と言いたいところですが、今回のSDK(v3.2.2)は取り込み時にNaniteを自動でオンにしません(建物は普通の静的メッシュとして配置されます)。つまり「手動削減が要らない」のはNaniteの効果ではなく、SDKがフル詳細をそのまま取り込めるから。さらにドローコールを詰めたいなら、メッシュ側でNaniteを有効化する“追加のひと手間”が要ります。ここは誤解しやすいので正直に書いておきます。

※ 補足:PLATEAUの起伏(地形)は、Unrealでは「Landscape(地形機能)」として取り込まれました。建物・道路は静的メッシュ、地形はLandscape、という棲み分けです。

③ 画質:フェアに2段階で比べる

画質の比較は、条件をそろえないとフェアになりません。というのも、今回のUnityはビルトインRP(最も基本のレンダリング)で、UnrealのLumen(高機能なリアルタイムGI・反射)とは“格”が違うからです。Lumenに対応するUnity側は本来HDRPであって、ビルトインRPではありません。そこで2段階に分けます。

(A) 公平な土俵:Unreal「Lumenオフ」 vs Unity「ビルトインRP」

まずはどちらも“基本のGI無し”にそろえた状態。これが純粋に近い、フェアな比較です。

※ 正直なところ、UnrealとUnityは座標系の扱いが違い、カメラの範囲・アングルを完全には一致させられませんでした(Unreal側は建物中心の寄り、Unity側は街全体の俯瞰)。なので“同じ構図の引き比べ”ではなく、質感・傾向の比較として見てください。

Unreal Lumenオフ
Unreal(Lumenオフ)
Unity ビルトインRP
Unity(ビルトインRP)

(B) 素のまま:Unreal「Lumenオン」(UE5の初期状態)

次に、Unrealを初期状態(Lumenオン)に戻したもの。光の回り込みや反射が加わり、ぐっとリッチになります。

Unreal Lumenオン
Unreal(Lumenオン・初期状態)。GIと反射でリッチに
⚠️ これは“エンジンの優劣”ではありません
「Lumenオン vs ビルトインRP」で見た目の差が大きいのは、パイプライン(レンダリングの土台)の格差であって、エンジンそのものの優劣ではありません。Unity側もURP/HDRPにすれば、この差はぐっと縮まります。その検証は次回(Unityの3パイプライン比較)で行う予定です。

項目ごとに見ると、こうでした:

  • :(A)の土俵ではどちらも直接光の素直な影で、大きな差は出にくい。Lumenオフは間接光が無いぶん、ビルの谷間がやや暗く沈みます。
  • 反射・映り込み:Lumenオフではガラス面の映り込みが乏しく、ビルトインRPと同程度。Lumenオンにすると、ガラスに周囲の街が映り込むようになります。
  • エッジ(ジャギー):UnrealはTSR/TAAでエッジが滑らか、ビルトインRPはやや硬め。
  • テクスチャ:出方はおおむね同等。

まとめると、(A)の公平な土俵ではほぼ互角。差が出るのはLumenをオンにしたとき(B)の“GIと反射”で、それは前述のとおりパイプラインの差です。

④ 性能:同じWindowsでFPSを実測

最後に性能です。同じWindows(RTX3060)で、同じ視点のFPS・取り込み時間・メモリなどを測りました。

UnrealのFPS/統計
Unreal(統計・FPS)
UnityのFPS/統計
Unity(統計・FPS)
指標Unreal (5.5.4)Unity(ビルトインRP)
FPS(エディタ・同規模視点)約69(Lumenオン)約60.6(VSync上限)
描画ポリゴン数約283万約904万
ドローコール3,8935,853
メモリ使用量約8.1GB約3.5GB
取り込みの手間SDKが自動DL+取込で約15〜20分(前シリーズ)Blender手作業で数時間

ポリゴン数の差(283万 vs 904万)は“UnrealのほうがUnityより軽い”という意味ではありません。Unity側は街全体を常に丸ごと描画しているのに対し、Unreal側は丸の内中心(53394611)に視界カリングが効いた状態のため、描画範囲がそもそも違います(前述のとおりアングル・範囲を完全一致できていません)。あくまで参考値として見てください。どちらもRTX3060で快適に動作し、Unityの60FPSはVSync上限・UEはLumen込みでも余裕がありました。

まとめ:どっちで作る?

  • 取り込みの手軽さ:UnrealのSDK直接インポートが圧勝。地図で範囲を選ぶだけで、Unityで必須だったBlenderの結合・削減・FBX変換・マテリアル再設定が丸ごと不要に。今回いちばんの差はここ。
  • 最適化手動のポリゴン削減は不要になった。ただしそれはSDK直接取込のおかげで、Naniteの効果ではない(本SDK版はNaniteを自動オンにしない)。
  • 画質公平な土俵(Lumenオフ vs ビルトインRP)ではほぼ互角。Lumenをオンにすればリッチだが、それはパイプラインの差で、Unityも上位パイプライン(URP/HDRP)にすれば縮まる(→次回 p930)。
  • 性能どちらもRTX3060で快適(UE約69FPS/Unity約60FPS)。Unrealはメモリ多め、初回シェーダーコンパイルが重い点に注意。

ざっくり言うと、PLATEAUの街を手早く高品質に立ち上げたいならUnreal+SDK既存のUnity資産や軽さを活かしたいならUnity。3部作の締めくくりとして、「正確な街を“どれだけラクに”手元に持ってくるか」はエンジン選びでかなり変わる、と実感しました。

3部作を通して、PLATEAUの街づくりはエンジンによって“手間のかかり方”がかなり違うと分かりました。手軽さ重視か、画質重視か、自分の作りたいものに合わせて選ぶのがよさそうです。

それでは、今回はここまで。最後までありがとうございました😊