このブログでは、ローカルLLMをRTX 3060で動かして「7Bが最適」と分かったり、Metal・MLX・CUDAで同じモデルを測り比べたりと、GPUの上でAIを動かす話を続けてきました。使っているうちに気になってきたのが、その土台を作っている会社たちは、これからどこへ向かうのかということ。
そこで今回は、ゲームエンジンの2大巨頭を並べた回と同じ型で、NVIDIA・AMD・Intelの「これから」を同じ切り口で並べてみます。スペックの羅列ではなく、「各社がどこで勝とうとしているか」の地図にするのが狙いです。とくに、組み込み・エッジで各社が何を狙っているかに重点を置きます😊
・3社のこれまでの歴史(創業から今の性格ができるまで)
・3社の現在地と、データセンター/AI PC(NPU)/エッジ・組み込みの3レイヤでの動き
・NVIDIAのVera Rubin、AMDのInstinct MI400・Helios、IntelのPanther Lake・Nova Lake
・各社の「勝ち筋」の違いを図解
・もうひとつの戦場=Intelの18A/14A というファウンドリ戦略
・個人開発者・組み込みエンジニアから見て何が変わるか
※この記事は紹介・調査系です。数値やロードマップは2026年7月時点で公式発表・イベント情報を確認して書いていますが、この分野は動きが速く予定も変わります。最新は必ず公式でご確認ください。
なぜ今、3社を並べるのか
ローカルLLMを触っていると、「結局ハードで決まる」場面によく出会います。前回の実測でも、同じモデル・同じコードなのに、RTX 3060(CUDA)はMacのM4より約3倍速く、VRAMに載るかどうかで速度が激変しました。つまり、私たちが何を作れるかは、半導体3社が次に何を出すかにかなり左右されるわけです。
だからこそ、「次に何が来るのか」を知っておくと、機材選びにも学ぶ順番にも効いてきます。
3社の立ち位置をざっくり
まず現在地を、雑に言い切ってしまいます。
- NVIDIA:AI計算の王者。GPUだけでなく、繋ぎ方(NVLink)から開発環境(CUDA)まで丸ごと押さえている
- AMD:挑戦者。CPU・GPU・NPU・FPGAを全部持つ総合力と、「オープンであること」を武器に追う
- Intel:再起を賭ける古豪。PCの足元を守りつつ、製造(ファウンドリ)という他社にない札で勝負する
この性格の違いは、それぞれの歩んできた歴史から来ています。「これから」を見る前に、まず「これまで」を押さえておきましょう。
これまで:どうやってここまで来たのか(歴史)
今の各社の戦略は、「その会社が得意なこと」と「痛い目を見たこと」の延長線上にあります。3社の歩みをざっと並べてみます。
| 年 | 会社 | 出来事 |
|---|---|---|
| 1968 | Intel | 創業 |
| 1969 | AMD | 創業(長くIntelのx86の二番手として歩む) |
| 1971 | Intel | 世界初のマイクロプロセッサ「4004」 |
| 1993 | NVIDIA | 創業(ゲーム向けグラフィックスから出発) |
| 1999 | NVIDIA | GeForce 256 を「世界初のGPU」として発売 |
| 2000年代初 | AMD | Athlon/Opteronで一時Intelを上回る |
| 2006 | NVIDIA | CUDAを公開(GPUを汎用計算に使えるように) |
| 2006 | AMD | ATIを買収しGPUを獲得(今のRadeon/Instinctの源流) |
| 2011〜 | AMD | Bulldozerが不振で経営難(一時は身売り観測も) |
| 2010年代 | Intel | スマホに乗り遅れ、微細化(10nm)でつまずき、製造の先頭をTSMCに譲る |
| 2017 | AMD | ZenアーキテクチャのRyzenで復活(Lisa Su体制) |
| 2021 | Intel | 「IDM 2.0」=製造に再投資し、ファウンドリで巻き返しへ |
| 2022 | AMD | Xilinxを買収しFPGA/Versalを獲得(組み込み・安全の駒) |
| 2022 | NVIDIA | ARM買収を規制で断念/同年からの生成AIブームでDC向けGPUが急伸 |
Intel(1968〜):PCの王者が、製造でつまずいた。「4004」以来、x86でPCの心臓を握り、自社で設計も製造もする垂直統合(IDM)を強みに長く王者でした。ところが2010年代、スマホ向けに乗り遅れ、微細化で何年もつまずいて、製造の先頭をTSMCに明け渡してしまった。だからこそ今、製造に再投資して他社の分まで作るファウンドリで巻き返す——18A/14Aが正念場、というわけです。
AMD(1969〜):何度も死にかけて、Zenで甦った。長くIntelの二番手でしたが、2000年代初頭にAthlon/Opteronで一矢報い、2006年にATIを買ってGPUを手に入れます。しかし2011年からのBulldozer不振で経営難に陥り、一時は本当に危なかった。そこから2017年のRyzenで復活し、Xilinx買収でFPGAまで揃えた。今の「CPU・GPU・NPU・FPGAを全部持つ総合力」は、この浮き沈みの積み重ねです。
NVIDIA(1993〜):GPUの会社が、AIの中心になった。もとはゲーム向けの会社。1999年に「世界初のGPU」を出し、2006年にCUDAでGPUを計算にも使えるようにしました。この一手が、2012年ごろからのディープラーニング隆盛でぴたりとハマり、2022年からの生成AIブームでデータセンター向けGPUが飛ぶように売れて時価総額トップ級へ。今の「CUDAで囲い込み+総合設計」は、この歴史の延長線そのものです。
——こうして並べると、冒頭の「王者/挑戦者/古豪」という性格が、ちゃんと歴史から来ているのが分かります。では、その3社が「これから」どこへ向かうのか。レイヤごとに見ていきます。
データセンター:もう「箱」ではなく「部屋」を売っている
いちばんお金が動いているのがここ。そして今、売り物の単位が変わりつつあるのが面白いところです。
NVIDIAは、現行のBlackwellに続いて Vera Rubin を投入します。HBM4を288GB積み、約50 PFLOPS(FP4)という規模。2026年後半に本格出荷とされ、最初のラックはすでにクラウド上で動き出しているとのこと。特徴的なのは100%液冷で、電力・冷却・ラック構成まで一体で設計していること。もはや「GPUという部品」ではなく、「データセンターという部屋ごと」を設計しにいっています。その先には Feynman(2028年ごろ)も見えています。
対する AMD は Instinct MI400シリーズ(2026年後半・CDNA 5・2nm)。上位の MI455X は 40 PFLOPS(FP4)級で、前世代から演算能力を倍増させる構え。さらに Helios というラック規模のプラットフォームを用意し、1ラックで最大3 AI EFLOPSを狙います。ここでのAMDらしさは、Heliosが「オープンでモジュラー」を掲げていること。囲い込みではなく、組み替えられることを売りにしています。2027年にはMI500も控えています。
| データセンター | NVIDIA | AMD |
|---|---|---|
| 次の主役 | Vera Rubin(2026後半) | Instinct MI400系(2026後半) |
| 規模の目安 | HBM4 288GB/約50 PFLOPS(FP4) | MI455X=40 PFLOPS(FP4) |
| ラック戦略 | 電力・冷却まで一体設計(100%液冷) | Helios=オープン・モジュラー(最大3 AI EFLOPS) |
| その先 | Feynman(2028頃) | MI500(2027・CDNA 6) |
個人には縁遠い世界に見えますが、ここで作られた技術が数年後に手元へ降りてくるので、方向性は見ておく価値があります。
AI PC:NPUという新しい足場
手元に近いのがこちら。ここで攻勢に出ているのが Intel です。
Panther Lake(Core Ultra シリーズ3)は、Intelの新しい製造技術 18A を使った最初の民生向けチップ。RibbonFET(新しいトランジスタ構造)と PowerVia(電源を裏側から供給する仕組み)という、教科書が書き換わる系の技術を投入しています。AI性能はプラットフォーム合計で180 TOPS——内訳はGPU(Xe3)が120 TOPS、NPUが50 TOPS。2026年にはデスクトップ向けに Nova Lake(52コア・新ソケット)も控えます。
AMD も Ryzen AI 400シリーズで60 TOPSのNPUを載せ、2026年初頭から出荷。さらに「Ryzen AI Halo」開発者向けプラットフォームも用意し、クラウドから手元まで同じROCmでという筋を通そうとしています。
「TOPS」ってなに? ざっくり「1秒間に何兆回の演算ができるか」の単位です(Tera Operations Per Second)。ただし注意したいのは、TOPSが大きい=体感が速い、とは限らないこと。Panther Lakeの180 TOPSも、内訳はGPU 120+NPU 50で、NPU単体は50です。用途によって使う場所が違うので、数字の大きさだけで比べないのが大事ですね。この「NPUは実際どこまで使えるのか」は、次回以降じっくり調べたいところです。
エッジ・組み込み:ここがいちばん面白い
そして本命。組み込みの現場から見ると、3社の性格差がいちばんハッキリ出ます。
NVIDIA は Jetson Thor。Blackwell世代のGPUを積み、130Wの枠で最大2070 TFLOPS(FP4)、メモリ128GB。前世代のOrin比でAI性能7.5倍・電力効率3.5倍という、かなり思い切った世代交代です。狙いは明確でロボット・フィジカルAI。Boston DynamicsやFigure、Amazon Roboticsなどが採用しています。「賢い機械を動かす頭脳」を取りにいっている格好です。
AMD は Versal AI Edge Gen2。こちらの売りはまったく違って、決定論的な応答——つまり「必ず決まった時間内に返す」ことと、ASIL/SIL といった機能安全への対応です。産業機械や安全が絡む自動化が主戦場。組み込みエンジニアには刺さる方向性で、速さより「外さないこと」で勝負しています。
Intel は、Panther LakeのNPUをエッジにも持ち込む構え。注目されているのはNPUとGPUへ賢く仕事を振り分けて発熱を抑えるという点。産業PCのようにファンレス・省電力・長期供給が求められる現場では、この地味な最適化が効いてきます。
| エッジ・組み込み | 主役 | 狙っているところ |
|---|---|---|
| NVIDIA | Jetson Thor | ロボット・フィジカルAI。圧倒的なAI性能で「機械の頭脳」を取る |
| AMD | Versal AI Edge Gen2 | 産業・安全用途。決定論的応答・機能安全で「外さない」 |
| Intel | Core Ultra(NPU)系 | 産業PC・省電力。NPU/GPUの賢い振り分けで熱と電力を抑える |
面白いのは、3社が同じ「エッジAI」という言葉で、まったく違う場所を狙っていること。ロボットの頭脳(NVIDIA)、安全な産業機械(AMD)、省電力な業務端末(Intel)——用途が違えば、選ぶチップも当然変わります。
各社の「勝ち筋」の違い(図解)
ここまでを、3社の「勝とうとしている場所」として1枚にまとめます。
もうひとつの戦場:製造(ファウンドリ)
3社を並べると、Intelだけルールが違うことに気づきます。NVIDIAもAMDも設計に専念し、製造は外(TSMCなど)に頼む会社ですが、Intelは自分で工場を持っている——ここが最大の違いです。
Intelの戦略はきれいに分かれていて、18Aは自社製品向け(Panther Lakeや、Clearwater Forest/Diamond Rapidsといったサーバ向け)、14Aは外部のお客さん向けという位置づけ。つまり「他社のチップも作ってあげる会社」になろうとしています。うまくいけば、設計と製造の両輪という他社にない強みになります。
もっとも、これは成功が約束された話ではありません。18A/14Aが計画どおり立ち上がるかは、Intelにとって正念場と見られています。ここが転ぶか回るかで、3社の力関係は変わり得る——そこが今いちばんの見どころだと思います😳
個人開発者から見ると、何が変わる?
壮大な話をしてきましたが、手元の実感に落とすとこうなります。
- 当面、ローカルAIはGPUが主役:実測でもCUDAが約3倍速でした。NPUは載ってきましたが、まずはGPUとVRAMを見るのが確実
- VRAMの重要性は変わらない:どの社の話も「メモリをどれだけ積むか・どう繋ぐか」が中心。手元でも「載るかどうか」が最重要なのは同じ
- 組み込みは"用途で選ぶ"時代へ:ロボットならJetson、安全が要るならVersal、省電力の業務端末ならIntel。「一番速いチップ」ではなく「目的に合うチップ」を選ぶ
- 選択肢は増える方向:AMDがオープンで攻め、Intelが製造で戻ってくれば、私たちが選べる幅は広がる。ここは素直に歓迎したいところ
まとめ
半導体3社の「これまで」と「これから」を、同じ切り口で並べてみました。
- 歴史から性格が来ている:製造でつまずき再起を賭けるIntel、何度も死にかけZenで甦ったAMD、CUDAでAIの中心になったNVIDIA
- NVIDIA=Vera Rubinで「部屋ごと」設計へ。電力・冷却・接続まで一体で押さえ、エッジはJetson Thorでロボットを狙う
- AMD=MI400+Heliosでオープン・モジュラーに対抗。組み込みはVersalで「安全・確実」を取る
- Intel=Panther Lake(18A)で足元のPCを固めつつ、14Aで外部の製造も引き受けるという他社にない札で勝負
- 同じ「エッジAI」でも、3社が狙う場所はまるで違う(ロボット/安全な産業/省電力な業務端末)
- 手元の実感としては、当面GPUとVRAMが主役。組み込みは用途で選ぶ時代へ
調べてみて面白かったのは、3社とも「AI半導体で勝つ」と言いながら、勝ち方の設計がまるで違うことでした。囲い込むNVIDIA、開くAMD、作るIntel。どれが正解かはまだ誰にも分かりませんが、選択肢が増えるのは使う側にとってありがたい話です。数年後にこの記事を読み返して、答え合わせをするのも楽しそうですね😊
それでは、今回はここまで。最後までありがとうございました😊
【主な参考】NVIDIA 公式・GTC 2026 関連発表(Blackwell/Vera Rubin/Feynman、Jetson Thor)/AMD 公式・CES 2026 発表(Instinct MI400シリーズ・Helios・Ryzen AI 400・MI500、Versal AI Edge Gen2)/Intel 公式・ロードマップ関連報道(Panther Lake=Core Ultra シリーズ3・18A・RibbonFET/PowerVia、Nova Lake、14A ファウンドリ戦略)/エッジAI半導体の各社比較記事。いずれも2026年7月時点で確認。ロードマップ・数値・時期は変更されることがあります。