当ブログでいちばん読まれている記事は、いまだにWhiskyの使い方を書いた記事です。MacでWindowsゲームを動かす無料ツールを紹介したもので、書いたのは2025年の初めでした。

そのWhiskyは2025年4月に開発が終了しています。以来「じゃあ今は何を使えばいいのか」という質問に、eightは記事の追記でしか答えられていませんでした。その後、実際に手を動かして確かめる回を何本か書いたので、今回はそれを1枚の判断表にまとめます

🧠 この記事でわかること
手段は5つに整理できる:ネイティブ/無料の互換レイヤー/有料の互換レイヤー/クラウド/仮想マシン
・★実測でどこまで行けたか:GPTKで47〜48fps、Wine 11.13でSteamは起動、それでも画面は真っ黒
2026年8月1日時点の版を全部並べます(Whisky・Wine・GPTK・CrossOver・クラウド各社)
・★「あなたはどれを選ぶべきか」の判断表:目的別・予算別・タイトル別
・★共通の期限:2027年秋のRosetta 2終了で、5つのうち2つに時計が付いている

Whiskyが終わって1年3か月、結局どうすればいいのか

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この1年、Macでゲームを動かす話を何度か書きました。Whisky亡きあと無料でどこまで遊べるのかでは、正直に言って惨敗しました。ゲーム画面に一度も辿り着けていません。Apple純正のGame Porting Toolkitを使い倒すでは、ベンチマークは動いたのにSteamは開けませんでした。

個別に書いてきたので、記事は増えたのに「で、どれを使えばいいの?」への答えが散らばったままでした。今回はそこを片付ける回です。新しい重い検証はしません。代わりに、これまでの実測値と、2026年8月1日時点で確認できる各ツールの状況を、同じ土俵に並べます。

⚠ 先に、この記事の誠実さについて
5つの手段のうち、eightが自分で動かして測ったのは①と②だけです。③CrossOverは有料なので購入しておらず、④クラウドと⑤仮想マシンもこの記事では起動していません。触っていないものは「調べた話」として明記し、実測値と混ぜません。各節の冒頭に【実測】【調査】の印を付けてあります。

用語集

この分野は略語が多いので、先に片付けます😊

用語平たく言うと
互換レイヤーWindowsを丸ごと動かすのではなく、アプリからの命令をその場で訳す仕組み。Windows本体は要らないので軽い
Wineその代表格。「Windowsのこの機能を呼びたい」という要求を、Mac側の仕組みで肩代わりします。互換レイヤーの土台で、この記事に出てくる無料・有料のツールはほぼ全部これを使っています
ボトル/プレフィックスWineが作る「仮想のCドライブ」。アプリごとに独立した環境を作れるので、1つ壊れても他に影響しません
DirectXWindowsのゲームが「この絵をこう描いて」とGPUに頼むときの共通語。Windows専用なので、Macにはこの言葉が分かる相手がいません
MetalAppleの同じ役目のもの。MacのGPUはこちらしか分かりません
D3DMetalDirectXの言葉をMetalの言葉に通訳する部品。Apple製で、Game Porting Toolkitの心臓部です
GPTKGame Porting Toolkit。Appleが配っている無料の一式で、中身はWine + D3DMetal。名前のとおり本来は移植を検討する開発者向けです
CEFChromium Embedded Framework。アプリの画面をWebページの技術で作る部品。SteamもEpicも最近のランチャーはほぼこれで、★この記事でいちばん厄介な壁です
反チート対戦ゲームで不正を見張る仕組み。OSの最深部に入り込んで監視するものが多く、Appleがそこを閉じているためMacに載せられません
仮想マシンMacの中に本物のWindowsを丸ごと入れて動かす方式。翻訳ではないので素直ですが、重く、Windowsのライセンスも要ります
Rosetta 2Intel向けに作られたプログラムを、Apple SiliconのMacで動かす変換の仕組み。★2027年秋に大部分が終了予定で、この記事の期限の話につながります
ARM版WindowsApple Siliconと同じ系統のCPU向けに作られたWindows。仮想マシンで動くのはこちらだけで、普通のWindowsゲーム(x86)はさらにWindows側で変換されます

手段は5つある(全体像)

まず地図を描きます。ゲームが動く場所と、途中に挟まる翻訳の数で分けるとこうなりました。

Windowsゲームを遊ぶ5つの経路(翻訳の数が増えるほど、入口でつまずきやすい) ① Mac版ネイティブ Mac用に作られたゲーム 翻訳 0 回 Metal(Apple) Mac の GPU いちばん確実で速い ただし対応タイトルに限る ②③ 互換レイヤー Windows用のゲーム 翻訳 3 回(重ねがけ) Wine(Windowsの機能) D3DMetal(DirectX) Rosetta 2(CPU命令) 速さは出る。入口で止まりやすい ⑤ 仮想マシン Windows用のゲーム 翻訳 2 回+OS丸ごと x86 → ARM 変換 ARM版 Windows 仮想のGPU 素直だが重い・GPUが壁 ④ クラウド Windows用のゲーム 翻訳 0 回 遠くの本物の Windows機で実行 絵だけ受け取る Mac側の性能は関係ない 代わりに回線が全て ★ 翻訳の数だけでは決まらない。実際に効くのは「入口を通れるか」と「通ったあと速いか」の2つ ②③で止まるのはほぼ入口(ストアが開かない・古い実行ファイル・日本語)で、速さの問題ではありませんでした ①④は翻訳が0回なので入口の問題が起きない。だから「確実さ」で選ぶならこの2つになります

ここでいちばん大事なのが、図の下に書いた「入口を通れるか」と「通ったあと速いか」は別という点です。前回のGPTKの回で、つまずいた4つ(Steamが開かない・32bitが通らない・日本語が読めない・OpenGLが起動しない)がひとつも描画速度の担当ではなかったと分かったのが、この整理のきっかけでした。

速さを決めているのはD3DMetal、そこまで辿り着けるかを決めているのはWine。この見方で5つを並べると、選び方が驚くほど素直になります。

先に一覧です。詳細はこのあと1つずつ書きます。

手段費用入口の通りやすさ速さ2027年秋の期限
① Mac版ゲーム代のみ◎ 問題なし◎ 最速かからない
② 無料の互換レイヤー0円△ ここで止まる○ 通れば速い★かかる
③ CrossOver$74/年○ 面倒を見てくれる対応作業が進行中
④ クラウド無料枠あり/月額◎ 問題なし△ 回線次第かからない
⑤ 仮想マシンソフトは0円/Windows代○ 本物のWindows△ GPUが壁かからない

手段①:Mac版で遊ぶ(翻訳しない)

【実測あり/ただし本記事では版の確認のみ】

身も蓋もない話ですが、遊びたいゲームにMac版があるならそれが最善です。翻訳を1回も挟まないので、速くて、壊れません。この記事で紹介する残り4つは、全部「Mac版が無いとき」の話です。

なぜMacでゲームが増えたのかを調べた回で見たとおり、対応タイトルは着実に増えています。Cyberpunk 2077、バイオハザード RE:4、Baldur's Gate 3、Stray、No Man's Sky あたりは、いずれもMac版があります。

Mac版のSteamクライアント自体も、Apple Siliconにきちんと対応しています。手元で確認するとこうなりました。

$ lipo -archs /Applications/Steam.app/Contents/MacOS/steam_osx
x86_64 arm64        ← 両対応(ユニバーサル)

$ lipo -archs "$HOME/Library/Application Support/com.isaacmarovitz.Whisky/Libraries/Wine/bin/wine64"
x86_64              ← 比較用:Whisky同梱のWineはIntel向けのみ

同じMacの中に、素直にApple Siliconで動くものと、Rosetta 2で変換して動くものが同居しているのが分かります。この差が、後半の「期限」の話にそのままつながります。

⚠ 「Mac対応」表示だけを信じない
古いMac版には、Intel専用のうえ32bitのままのものが残っています。これはmacOS Catalina(2019年)以降そもそも起動しません。ストアの対応表示は残っていても動かない、という組み合わせがあるので、購入前に対応OSのバージョンまで確認したほうが安全です。

それでも数字を見ると、Macでゲームを遊ぶ人はまだ少数派です。Steamが毎月公開している調査では、こうなっています(本稿執筆時点で最新は2026年6月分)。

OS(2026年6月)シェア
Windows94.10%
Linux3.69%
macOS2.21%

macOSはLinuxに負けています。ここが増えない限り、移植する側の動機も増えない——という構造の話はこちらの回で詳しく書きました。

手段②:無料の互換レイヤー(Whisky・Heroic+Wine・GPTK)

【実測あり】

ここがこの記事の本丸です。無料でWindowsゲームを動かす道具は、今のところ大きく3つあります。まず現在地を、2026年8月1日に確認した版で並べます。

道具最新版(2026-08-01時点)中のWine状況
Whiskyv2.3.5(2025-04-05)7.7(2022年)★開発終了。GitHubのリポジトリも読み取り専用(アーカイブ)になっています
Heroic + WineHeroic v2.22.0(2026-05-16)
Wine 11.14(2026-07-27)
11.14(最新)現役。Wineを自分で選んで入れ替えられます
GPTK(Gcenx版)3.0-3(2026-03-03)7.7(2022年)D3DMetalは新しいがWineが古い。5か月更新なし
📌 この表が語っている、いちばん大事なこと
新しいWineを持っているものはD3DMetalを持っておらず新しいD3DMetalを持っているものはWineが2022年で止まっている。★「新しいWine + 新しいD3DMetal」という本命の組み合わせを、無料の世界では誰も配っていません。これが2026年8月時点の現在地です。

Whisky:起動はする。けれど現代のSteamは動かない

まず、開発終了したWhiskyが今も動くのかどうか。前々回で確かめました。macOS 26.5.2で普通に起動し、Windowsのコマンドも通ります。「開発終了=即使えない」ではありません

問題はその先でした。ボトルの中に1年以上放置していたWindows版Steamを起動したところ、自己更新が走って32bit版から64bit版に切り替わり、そこから二度と起動しなくなりました。Wine 7.7は64bit版のSteamを動かせなかったのです。しかも古いクライアントの実体は上書き済みで、戻すこともできませんでした。

⚠ これから試す方へ:既存のボトルには触らないでください
長く放置したアプリを起動することは、それ自体が更新のトリガーです。手元の環境を壊さずに試すなら、新しいプレフィックス(仮想のCドライブ)を別に作ってから触るのが安全です。eightはこれで、動いていた環境をひとつ失いました😖

Heroic+新しいWine:入口はひとつ通った

ではWineを新しくすれば直るのか。Heroic Games Launcher(無料・オープンソース)はWineのバージョンを自分で選べるので、当時の最新だったWine 11.13を入れて同じSteamを動かしました。

結果、Steamは起動しました。無限に再起動を繰り返していた画面描画の部品が正常に立ち上がり、サインイン画面まで到達しています。つまり悪かったのはSteamでもmacOSでもなく、更新が止まったWineだけが取り残されていたということでした。

ただし、その先で止まりました。サインイン画面の中身が真っ黒だったのです。SteamのUIはCEFで作られていて、その描画が失敗していました。

共通の壁:CEFが描画されない

この壁は、道具を替えても越えられませんでした。試したことを並べておきます。

試したこと結果備考
DXMT(有志のDirectX変換)を導入失敗画面は黒いまま
GPUを使わせない起動オプション失敗★エラーは消えたのに画面は黒いまま
描画を同一プロセスで行わせる失敗
プロセス分割をやめさせる失敗
CEFのキャッシュ削除失敗
Wineの仮想デスクトップを使う失敗起動しなくなった

Warframeのランチャーでも同じでした。こちらは画面が真っ白で、色が違うだけで壁は同一です。どちらもCEF製でした。

最近のゲームランチャーはほぼCEF製なので、ここが通らないとゲーム本体を起動する画面に辿り着けません。Warframeに至っては、利用規約のファイルまでダウンロードして「同意してください」の画面を出そうとしたところで止まっていました。押すべきボタンが見えない、というなかなか惜しい負け方です😅

GPTK:通ったところでは、ちゃんと速い

Apple純正のGPTKは別の回でまるごと1本使って調べました。無料で、サインイン不要の配布版なら240MBを展開するだけです。

そして64bitのDirectX 11アプリなら、きちんとD3DMetalを通って動きます。Unigine Superposition(1280×720・品質最低寄り)での実測がこちらです。

サンプルFPSGPU時間
1回目48.2720.73 ms
2回目(約36秒後)47.3721.03 ms

Wine・D3DMetal・Rosetta 2という三重の翻訳を通してこの数字なら、素直に速いと思います。速さは足りているのです

一方で、同じGPTKで32bitのDirectXアプリはD3DMetalを一切通りません。64bit側の受け渡し用ファイルが約106KBの薄い板なのに対し、32bit側は約455KBあって昔ながらのOpenGL経路が同梱されている、という作りの差でした。Apple公式の配布物にも32bit用は1つも入っていません。古いゲームほどここに当たります。

日本語が「□」になったときの直し方

互換レイヤーを使うと、ほぼ確実に日本語が豆腐(□□□)になります。新しいプレフィックスを作るたびに再発するので、手順を再掲しておきます。追加のダウンロードは不要で、macOS標準のフォントだけで直ります。

# ❌ 効かない:.ttc形式かつファイル名が日本語だと認識されません
cp "/System/Library/Fonts/ヒラギノ角ゴシック W3.ttc" "$WINEPREFIX/drive_c/windows/Fonts/"

# ✅ これで直る:ASCII名のTTFにして置く
cp "/System/Library/Fonts/Supplemental/Arial Unicode.ttf" \
   "$WINEPREFIX/drive_c/windows/Fonts/arialuni.ttf"

あわせて「このフォントの代わりにこれを使う」とレジストリに登録します。

[HKEY_LOCAL_MACHINE\Software\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\FontSubstitutes]
"MS UI Gothic"="Arial Unicode MS"
"MS Gothic"="Arial Unicode MS"
"Meiryo"="Arial Unicode MS"
"Yu Gothic"="Arial Unicode MS"
"MS Shell Dlg"="Arial Unicode MS"

結局、②は何に向いているのか

向いているもの向いていないもの
ランチャー無しで直接起動できる単体の実行ファイルSteam・Epicなどストア経由が必須のもの
64bitのDirectX 11あたりで作られたもの32bitの古いゲーム(D3DMetalを通らない)
オフラインで完結するもの反チートを使う対戦ゲーム(そもそもMacに載りません)
「動かすこと自体を楽しめる」場合😊今日どうしても遊びたい場合

手段③:有料の互換レイヤー(CrossOver)

【調査のみ/購入していません】

この記事は無料の手段を検証する方針なので、CrossOverは買っていません。触っていないものを評価はできないので、事実の紹介にとどめます。

まず経緯として、Whiskyの作者自身がCrossOverへの移行を勧めています。開発をやめた理由が「CrossOverの技術を土台にした無料ツールを配り続けると、その土台の開発が立ち行かなくなる」というものだったからです。技術的に行き詰まったわけではありません。

項目内容
現行版CrossOver 26(2026年2月)。Wine 11.0ベース。②の無料勢が7.7か11.14に割れているのに対し、こちらは新しいWineと商用のDirectX変換が最初から組んであります
価格$74(12か月のサポートと更新つき)/生涯サポート $494。買い切りではなく更新制です
★次期版CrossOver 27 のプレビューがApple Siliconネイティブ(ARM64)でテスト中。正式版は2027年前半予定
⚠ そのプレビューの制限現時点ではD3DMetal非対応、多くのゲームランチャーが動かない、既存ボトルをARM64へ変換する機能もなし

この最後の行が示唆的でした。Rosetta 2に頼らない作りへ移す作業は、お金を取っている側でもまだ道半ばだということです。プレビューで「D3DMetal非対応」ということは、今のところARM化と描画性能が両立していません。

無料と有料の差が何なのか、eightなりに整理するとこうなりました。差は機能ではなく、誰かが更新を続けるかどうかです。CEFを通し、日本語を用意し、Rosetta終了に備えてARM版を作る。②で自分がぶつかった壁は、全部その作業の中身でした。無料で使えていたものは、有料の誰かの仕事の上に乗っていたわけですね。

手段④:クラウドゲーミング

【調査のみ/この記事では起動していません】

ここまでの話を全部ひっくり返す手段があります。Mac側で動かすのをやめることです。

クラウドゲーミングは、遠くにある本物のWindows機でゲームを動かし、その画面だけを受け取ります。翻訳が0回なので、CEFも32bitも日本語も、これまでの壁が丸ごと消えます。Macは動画を受け取って操作を送り返すだけなので、Mac側の性能もほぼ関係ありません。

サービス無料で遊べるか補足
GeForce NOW無料メンバーシップあり。1セッション1時間+順番待ち(回数の制限はなし)Mac対応。日本ではNVIDIA直営が2024年4月開始。★通信会社版(Powered by SoftBank/au)は2025年10月31日で終了しています
Xbox Cloud Gaming広告つき無料をテスト中。1セッション1時間・月およそ5時間2026年6月時点でXbox Insider限定の試験。Safariを含むブラウザで動くのでMacにアプリは不要
⚠ クラウドの弱点は2つある
遅延は物理的に消えません。手元の操作が遠くの機械に届き、絵が返ってくるまでの往復は必ずかかります。対戦系のシューティングには向きません。
「持っているゲームが遊べる」とは限りません。どちらのサービスも対応タイトル制で、自分のライブラリが丸ごと動くわけではないので、始める前に対応表を確認してください。
なお有料のGeForce NOWは、2026年1月から月100時間の上限が入りました。「使い放題」ではなくなっています。

手段⑤:仮想マシン

【調査のみ/この記事では起動していません】

最後は、Macの中に本物のWindowsを丸ごと入れる方式です。翻訳ではないので、Windowsのソフトは素直に動きます。

そしてこの手段、いつのまにかソフト代が0円になっています

ソフト費用補足
VMware Fusion無償(2024年11月から個人・商用ともライセンスキー不要)Broadcomが提供。手元にあるのは13.6.3で、最新はPro 26H1(2026年5月)
UTM無償(オープンソース。App Store版のみ有料)手元にあるのは4.6.5
Parallels Desktop有料方針により購入していないため紹介のみ

ただしゲーム用途では、無視できない制約が2つあります。

ひとつはARM版Windowsしか動かないことです。Apple SiliconのMacで仮想化できるのは、同じ系統のCPU向けに作られたWindowsだけ。普通のWindowsゲームはx86向けなので、Windows側でもう一度変換されることになります。図で見た「翻訳2回」はこれです。

もうひとつはGPUです。仮想マシンから見えるGPUは本物ほどの機能を持たず、DirectX 12のフル性能は出ません。軽いゲームなら実用になりますが、重い3Dは厳しい、というのが一般的な評価です。

そしてWindows本体のライセンスは別途必要なので、「完全に無料」にはなりません。ゲーム以外にもWindowsのアプリを使いたい人には有力ですが、ゲームだけが目的なら遠回りだと思います。

★あなたはどれを選ぶべきか

ここまでの5つを、選ぶ順番に並べ直します。まず分岐図です。

遊びたいゲームが決まっているなら、上から順に4つ答えるだけで決まります Q1. そのゲームに Mac版はある? はい → ① Mac版 迷う理由がありません Q2. 反チートを使う対戦ゲーム? はい → ④ クラウドのみ Macに載せる道はありません Q3. Steam などストア経由が必須? はい → ③ or ④ ②はCEFで止まります Q4. ゲーム以外のWindowsアプリも要る? はい → ⑤ 仮想マシン ソフト代は0円 ここまで全部「いいえ」なら → ② 無料の互換レイヤーの出番 単体の実行ファイル・64bit・オフライン完結、なら通る見込みがあります ★ 無料の互換レイヤーは「最初に試すもの」ではなく「最後に残るもの」でした いちばん手前に見えて条件がいちばん厳しい。ここから始めると、たいてい入口で止まります

eight自身、去年までは②を最初の選択肢だと思っていました。実際に測ってみると順番が逆で、②は他の全部が当てはまらなかったときに残る道だったというのが、この1年でいちばん認識が変わったところです。

目的別

やりたいこと第一候補理由
特定のタイトルを遊びたい① まずMac版の有無を確認対応していれば翻訳ゼロ。ここを飛ばして互換レイヤーに行くのがいちばんもったいない
対戦・オンラインFPS④ クラウド反チートがMacに載らないので、互換レイヤーでは原理的に無理。ただし遅延との相談
最新の重い3Dを高画質で① または ④②は速さでなく入口で止まる。⑤はGPUが足りない
古いWindowsのインディー・2D② 無料の互換レイヤーランチャー無しの単体exeなら通る見込み。ただし32bitはD3DMetalを通らない点に注意
Windowsのアプリ全般も使いたい⑤ 仮想マシンソフトは無償。ただしWindowsのライセンスは要る
仕組みを知りたい・遊びで試したい② 一択ログを読む楽しさは他の手段にはありません😊

予算別

予算できること
0円Mac対応の基本無料タイトル/クラウドの無料枠(1時間ずつ・順番待ちあり)/②の互換レイヤーで試行錯誤。この3つは今日から始められます
ゲーム代だけ① Mac版を買う。費用対満足度はこれがいちばん高いと思います
月額④ クラウドの有料プラン。Mac本体を買い替えずに重いゲームが動く(有料版は月100時間の上限あり)
年 $74③ CrossOver。②で自分が踏んだ穴を、代わりに埋めてもらう対価と考えると分かりやすいです
Windows代⑤ 仮想マシン。ソフトは0円なので、実質Windowsのライセンス代のみ

どの手段にも共通する期限——2027年秋

最後に、選ぶ前に知っておいたほうがいい話をひとつ。5つのうち2つには時計が付いています

Rosetta 2 の終了に向けたスケジュール 2025年4月 Whisky 開発終了 2026年2月 CrossOver 26 (Wine 11.0) 2026年8月(今ここ) macOS 26.5.2 Rosetta 2 は警告つきで稼働 2026年秋 macOS 27 Golden Gate Apple Silicon専用に Rosetta 2 完全対応の最後 2027年秋 macOS 28 Rosetta 2 は大部分が終了 時計が付いている手段 ② 無料の互換レイヤー / ③ CrossOver 中のWineがIntel向けの実行ファイルだから 時計が付いていない手段 ① Mac版 / ④ クラウド / ⑤ 仮想マシン そもそもIntel向けの部品を使っていない

互換レイヤーの中身がIntel向けであることは、手元でも確認できます。前の節で載せた lipo -archs の結果がそれで、Whisky同梱のWineは x86_64 のみでした。つまりRosetta 2の上で動いています。

macOS 27の名前はGolden Gateで、2026年秋の予定です。Intel Macを切り捨てる最初のmacOSであり、同時にRosetta 2を完全にサポートする最後のmacOSでもあります。その次のmacOS 28(2027年秋予定)で、Rosetta 2は大部分が動かなくなります。

📌 ただし、ゲームには例外の含みがあります
Appleは、macOS 28以降も「Intelのフレームワークに依存する、更新が止まった古いゲームを動かすための一部機能は残す」と説明しています。ゲームだけは特別扱いする含みがあるわけです。ただし「一部機能」がどこまでを指すのかは、まだ読み切れません。互換レイヤーのようにWineを丸ごとIntel向けで動かす使い方まで含まれるのかは、現時点では不明です😅

そして、この期限があるからこそ、CrossOverが27でARM64ネイティブ化を進めているわけです。有料側が先に手を打っているという構図は、②と③の差をよく表しています。

まとめ

  • 手段は5つ:① Mac版ネイティブ ② 無料の互換レイヤー ③ CrossOver ④ クラウド ⑤ 仮想マシン。判断の軸は「入口を通れるか」と「通ったあと速いか」の2つです
  • ②で止まるのは、ほぼ入口でした。CEF製のランチャーが描画されず、Steamは黒画面、Warframeは白画面。6つの対処すべて失敗しています。速さの問題ではありません
  • 逆に、入口を通ったところではきちんと速い。GPTKで64bitのDirectX 11なら47〜48fps・GPU時間21ms。三重の翻訳を挟んでこれです
  • 2026年8月1日時点で、無料の世界に「新しいWine + 新しいD3DMetal」の組み合わせは存在しません。Wineが新しいものはD3DMetalを持たず、D3DMetalが新しいGPTKはWineが2022年の7.7のまま(Gcenx版は3.0-3で5か月更新なし)
  • Whiskyは起動はします(v2.3.5・2025年4月が最終)。ただし現代の64bit Steamは動かず、リポジトリもアーカイブ済み。これから始める人には勧められません
  • 既存のボトルには触らないこと。放置したアプリの起動は更新のトリガーで、eightは実際にひとつ壊しました
  • ③ CrossOverは$74/年。次期27でApple Siliconネイティブ(2027年前半予定)ですが、プレビュー時点ではD3DMetal非対応・ランチャー多数が非対応。有料側でもARM化は道半ばです
  • ④ クラウドは翻訳0回なので、これまでの壁が丸ごと消えます。無料枠は1時間ずつ。ただし遅延は消えず、対応タイトル制です
  • ⑤ 仮想マシンはソフト代0円(VMware Fusion・UTM)。ただしARM版Windows限定で翻訳が二重になり、GPUも壁。Windowsのライセンス代は別途
  • 2027年秋のRosetta 2終了という期限は、②と③にだけかかります。①④⑤は影響を受けません
  • 無料の互換レイヤーは「最初に試すもの」ではなく「最後に残るもの」。いちばん手前に見えるのに、条件はいちばん厳しい

1年かけて手を動かしてみて、いちばん認識が変わったのはこの最後の点です。Whiskyの記事を書いた頃は「無料でここまでできる」という話のつもりでした。ところが実際に測ってみると、無料の互換レイヤーが引き受けているのはいちばん難しい仕事だったのです。ストアを開き、日本語を出し、古い実行ファイルの面倒を見て、CPUの世代交代に追いつく。どれも派手ではないのに、これが欠けると1本も起動しません。

ですから、いま誰かに聞かれたらこう答えます。遊びたいなら①か④、仕組みを知りたいなら②。②はうまくいかないことのほうが多いのですが、ログを読んで原因が分かる瞬間はやっぱり面白いので、そこが目的なら止めません😊

それでは、今回はここまで。最後までありがとうございました😊

【実測環境】Apple M4 / メモリ32GB / macOS 26.5.2 (25F84)。本文の実測値は当ブログの過去回で取得したもので、GPTKの47〜48fpsは Gcenx 配布の Game Porting Toolkit 3.0-3(同梱Wine 7.7 / D3DMetal 3.0)で Unigine Superposition 1.1 を 1280×720・品質最低寄り・ウィンドウ表示で実行し、Metal Performance HUD の値を採用した数字です。Steam・Warframe の描画不良は Wine 7.7 および 11.13 の両方で再現しています。★各ツールの版は2026年8月1日に確認しました(Whisky v2.3.5・リポジトリはアーカイブ済み/Heroic Games Launcher v2.22.0/Gcenx macOS Wine builds 11.14/Gcenx Game Porting Toolkit 3.0-3)。CrossOver・Parallels Desktop は方針により購入しておらず、クラウドゲーミングと仮想マシンも本記事では起動していないため、これらは公開情報に基づく紹介です。【主な参考】Steam ハードウェア&ソフトウェア調査(2026年6月分)/AppleInsider「First Apple Silicon native CrossOver build in testing」(2026年7月31日)/CodeWeavers CrossOver 製品情報/NVIDIA GeForce NOW メンバーシップ案内および日本提供に関する発表/Xbox Cloud Gaming の広告つき無料層に関する各社報道(2026年6月)/Broadcom VMware Fusion のライセンス変更(2024年11月)/MacRumors・Macworld ほか macOS 27 Golden Gate と Rosetta 2 の終了時期に関する報道。いずれも2026年8月1日時点で確認しています。仕様・価格・提供状況は変わる可能性があります。